雲上ブランド×ポップの革命――オーデマ ピゲ × スウォッチ「Royal Pop」発売、原宿では400人超が列をなした

時計・ファッション

2026年5月16日、腕時計ファンのみならずファッション・アート・ストリートカルチャーに至るまで、あらゆるコミュニティを巻き込んだ「事件」が起きました。スイスの独立系高級時計ブランド・オーデマ ピゲと、大衆向けウォッチの雄・スウォッチによる初のコラボレーション「Royal Pop」コレクションが、世界同時発売されました。

東京・原宿のスウォッチ ストアには開店前から400人を超える行列が形成され、警察が警備に当たるほどの熱狂ぶりでした。この一大コラボがなぜこれほどの騒動を巻き起こしたのか、その背景と商品の詳細に迫ります。

「雲上」と「ポップ」、相反する2ブランドが手を組んだ意味

オーデマ ピゲは1875年創業、スイス・ル・ブラッシュに本拠を置く独立系高級時計ブランドです。ロレックスやパテック フィリップと並び「雲上ブランド」と称される存在で、代表作ロイヤルオーク(1972年)はジェラルド・ジェンタがデザインした八角形ベゼルが象徴的です。スポーツウォッチとして誕生しながら百万円超の価格帯を誇り、世界中のコレクターが憧れる一本です。

一方のスウォッチは1983年にスイス時計産業再建のために誕生したブランドです。80年代のカラフルで遊び心あふれる「POPシリーズ」は若者文化と融合し、一世を風靡しました。その後もコラボや限定モデルを重ね、高いリセールバリューを生む「スニーカー感覚の時計」として地位を確立しています。

この二者が組む——それだけで業界に激震が走りました。スウォッチがグループ外の独立ラグジュアリーブランドとコラボするのは史上初のことであり、「なぜ今?」「なぜこの組み合わせ?」という問いがSNS上で飛び交いました。

「Royal Pop」とは何か――腕時計ではなかった

多くのファンが腕時計を想像していたなか、蓋を開けてみれば登場したのは懐中時計(ポケットウォッチ)でした。これは偶然ではなく、意図的なコンセプトです。両ブランドは「時計を手首に着けるもの」という固定概念から解放することを宣言。ポケット、バッグへのクリップ、付属スタンドを使ったデスククロックなど、多様なスタイルで楽しむことをコンセプトの核に据えています。

コレクション名「Royal Pop」はロイヤルオークの「Royal」と、80年代スウォッチの「POP」を合わせた造語です。全8モデルの名称は、世界8言語でそれぞれ「8」を意味する言葉を採用しており、ロイヤルオークの象徴である八角形ベゼルの8辺に対応しています。

全8モデルのラインナップ

モデル名言語カラースタイル価格
OTTO ROSSOイタリア語ピンクレピーヌ¥57,200
HUIT BLANCフランス語ホワイトレピーヌ¥57,200
GREEN EIGHT英語グリーンレピーヌ¥57,200
BLAUE ACHTドイツ語ライムグリーンレピーヌ¥57,200
ORENJI HACHI日本語ネイビーレピーヌ¥57,200
LAN BA中国語ブルーレピーヌ¥57,200
OCHO NEGROスペイン語ブラックサヴォネット¥61,600
OTG ROZルーマニア語ティールサヴォネット¥61,600

素材はスウォッチお得意のバイオセラミック。ムーブメントには新たに開発された手巻き版SISTEM51を搭載し、ロイヤルオークのエッセンスを凝縮しています。ケースバックはシースルーで、そのムーブメントを鑑賞できる仕様です。

発売当日の熱狂――原宿・銀座で警察が出動

5月16日の早朝から、スウォッチ各店舗前には長蛇の列が形成されました。

原宿店では朝7時ごろにすでに約300人が待機。その後も行列は膨れ上がり、最終的には400人を超える人波となりました。警察が警備に当たり、「道路を塞がないこと」「自転車を放置しないこと」を繰り返し指導する異例の事態となりました。購入打ち切りは50〜100人前後で行われ、多くのファンが手ぶらで帰ることになりました。

銀座店では前夜の5月15日夜から140人が待機。翌朝8時には500〜600人規模の行列に拡大し、午前10時頃に約100人で販売打ち切りとなりました。こちらでも「座る禁止・飲食禁止・近隣トイレの使用禁止」という厳しい規制が警察から告げられる場面がありました。

また、外国人客の割り込みをめぐって複数の喧嘩が発生。中国人グループが非公式の整理券を配布して列を自ら管理しようとするなど、異様な光景も報告されています。会場の大半が外国人客で占められていたことも、今回のコラボが国際的な注目を集めていたことを物語っています。

なぜこれほど売れるのか――新たな顧客獲得の戦略

「なぜ6万円以下の懐中時計にここまで人が並ぶのか」という疑問の答えは、両ブランドの異なる顧客層の交差点にあります。

オーデマ ピゲのロイヤルオークはエントリーモデルでも数百万円。本物を手にできるのは一握りの富裕層に限られます。しかし「Royal Pop」なら約6万円でそのDNAを手にすることができます。これはオーデマ ピゲブランドへの入り口として機能し、将来の高額ウォッチ購入者を育てる布石になり得ます。

スウォッチ側にとっても、コラボのたびにSNS・メディアで拡散される「バズる時計」としての地位をさらに強固にする機会です。2022年のオメガ×スウォッチ「MoonSwatch」が世界的社会現象となったように、今回もポップカルチャーとラグジュアリーの融合という新しい価値観を広く訴求しました。

さらに今回は「懐中時計」という選択が若い世代の好奇心を刺激しました。「レピーヌ」「サヴォネット」という懐中時計の様式を初めて知った方も多く、高級時計文化全体へのすそ野を広げる効果も期待されます。

まとめ

オーデマ ピゲ × スウォッチ「Royal Pop」は、単なるコラボ商品を超えた文化的事件でした。雲上ブランドとポップブランドの融合は、高級時計の「敷居」を取り払い、新たな世代・新たな市場へのドアを大きく開きました。原宿や銀座の熱狂的な行列は、その需要の大きさを如実に示しています。

入手できなかった方も、転売価格が落ち着いたタイミングを狙うか、今後の再販情報に注目してください。なお購入はスウォッチ直営店のみ・1人1本限定で、オンラインでの販売は行われていません。


公式サイト

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